トムソンテクニック

トムソンテクニックとは
創始者と歴史
トムソンテクニックは、アメリカのカイロプラクターであるJ・クレイ・トムソンD.C(J. Cray. Thompson)によって開発されました。彼は1909年に生まれ、カイロプラクティックの創始者D.D.パーマーの影響を受けつつ、独自の矯正法を確立しました。
トムソンテクニックの誕生
- ドロップテーブルの発明
1950年代に、トムソンD.C.は「ドロップテーブル」を開発。このテーブルは、患者の身体の負担を軽減しつつ、矯正を行うために設計されています。 - 進化と普及
その後、改良が進み、現在では米国をはじめ、世界中で使用されています。
このテクニックは、単に力を加えるのではなく、テーブルのドロップ機能を使って最小限の力で矯正を行うため、痛みや恐怖心を軽減しつつも高い効果を発揮します。
トムソンテクニックの効果と優れたポイント
最小限の力で的確な矯正
- トムソンテクニックは、テーブルのドロップ機能を利用し、最小の力で確実な矯正を行います。これにより、患者への負担を軽減できます。
優れた安全性
- スラストの衝撃をテーブルが吸収するため、矯正時の痛みや不快感が少なく、患者がリラックスした状態で治療を受けられます。
広範囲な症状に対応
- 腰痛、背部痛、肩こり、頭痛、むち打ちなど、様々な症状に対応でき、全身のバランスを整えることができます。
このように、トムソンテクニックは患者の体に優しく、高い効果を提供できるカイロプラクティック手法として、世界中で多くの支持を受けています。
トムソンテーブルの開発と特徴
トムソンテクニックで使用する専用テーブルは「トムソンベッド」または「ドロップテーブル」と呼ばれ、次の特徴があります。
ドロップ機能
- 患者の身体の部位ごとに独立して調整できるドロップピースを搭載しており、矯正力を精密に制御できます。
昇降機能
- テーブルには昇降機能が備わっており、患者は立った状態からスムーズに施術を受けることができます。
高精度な矯正
- 脊椎全体を精密に調整でき、短期間で効果的な矯正が可能です。
トムソンテーブルは、これらの機能により、患者にとって非常に優れた矯正ツールとして使用されています。特に、患者に負担をかけることなく、精密に矯正ができる点が大きな利点です。
ディアフィールド測定法
ディアフィールド脚長検査は、トムソンテクニックの中で非常に重要な役割を果たします。これは、患者の骨盤や頚椎の歪みを診断するための測定法であり、矯正を行う際の基準となります。
脚長差を測定
トムソンテクニックにおけるディアフィールド測定法は、以下の手順で行われます。
患者をうつ伏せに寝かせる
- 患者がうつ伏せに寝た状態で、両足を伸ばします。この姿勢にすることで、骨盤や脊椎の状態をより明確に確認できます。
両足の踵の高さを比較する
- 次に、患者の両足の踵の位置を視覚的に比較します。左右の踵の高さに差があれば、骨盤や脊椎に歪みがあることを示唆しています。この脚長差が骨盤や脊椎の不正な位置を反映しており、矯正すべき部位の手がかりとなります。
プラス骨盤とマイナス骨盤
ディアフィールド検査では、脚長差が現れる方向に基づいて、患者の骨盤の歪みをプラス骨盤(Positive Derifield)またはマイナス骨盤(Negative Derifield)として分類します。
プラス骨盤(Positive Derifield)
- プラス骨盤は、脚長差が確認された後に、膝を曲げた状態(膝屈曲)で踵の差が解消する場合に見られます。
- この現象は、骨盤の一部が後方にずれていることを示唆しています。通常、後方にずれた骨盤(腸骨)が原因で、脚長差が発生していると考えられます。この場合、矯正は比較的簡単で、骨盤部位のスラストによって短期間で改善されることが多いです。
マイナス骨盤(Negative Derifield)
- マイナス骨盤は、脚長差が確認された後に、膝を曲げても脚の長さに変化がないか、逆に差が大きくなる場合に見られます。
- この状態は、骨盤と共に仙骨の歪みも関与している可能性が高いことを示しています。仙骨が前下方にずれていることにより、脚長差が発生しているとされ、矯正にはより慎重なアプローチが求められます。
- マイナス骨盤の場合、仙骨と腸骨の両方にアプローチする必要があり、施術には細心の注意を払うことが求められます。
測定結果に基づいた矯正
ディアフィールド測定法の結果に基づき、最適な矯正法を選択します。
- プラス骨盤の場合
骨盤の一部の歪みが確認されるため、矯正は比較的容易です。施術者は、後方にずれた腸骨を前方に押し戻すことで矯正を行います。このアプローチにより、通常は短期間で脚長差が解消され、症状が改善します。 - マイナス骨盤の場合
より複雑な歪みがあるため、矯正は慎重に行う必要があります。仙骨の歪みを修正することが重要であり、その後に腸骨の矯正を行うことが一般的です。特に、仙骨が前下方にずれている場合、通常の矯正方法では不十分なことがあるため、施術者は患者の体に合わせた微調整を行うことが求められます。
重要性と効果
このディアフィールド測定法は、患者の骨盤や頚椎の歪みを明確に把握するために非常に重要です。正確な測定と診断に基づき、最適な矯正方法を選択することで、患者の症状を効率的かつ効果的に改善することが可能になります。
ディアフィールド検査によって、矯正すべき部位を正確に特定し、その後の施術が非常に精度高く行えるため、トムソンテクニックにおける施術の質と安全性が確保されます。
頚椎症候群へのアプローチ
頚椎症候群(Cervical Syndrome)とは、脚長検査において頭部を回旋させた際に脚長差が劇的に変化する症例を指し、上部頸椎や後頭骨のサブラクセーションが身体全体に影響を与えている状態です。このような頚椎の問題は、全身の筋肉バランスに深刻な影響を及ぼす可能性があるため、適切な矯正が必要です。
頚椎症候群の特徴と影響
- 頚椎症候群では、首の上部にある環椎(C1)や軸椎(C2)、そして後頭骨(Occiput)の歪みが中枢神経系に影響を与え、全身の筋肉バランスを崩す原因になります。
- 実際に、頚椎のズレが原因で脚長差が生じている患者において、首の歪みを正すだけで脚長差が解消され、骨盤の歪みも自然に整うことがあります。上部頚椎のアライメント(配置)は、全身の姿勢や体のバランスに重要な役割を果たすため、これを整えることが非常に重要です。
トムソンテクニックによる矯正
トムソンテクニックでは、頚椎症候群に対して以下の手順で施術を行います。
頚椎矯正の優先
トムソンテクニックの原則として、頚椎症候群が認められた場合は、骨盤よりもまず頚椎の矯正を優先します。
これは、上部頚椎のズレが全身の筋肉の緊張やバランスに大きな影響を与えているためです。ドロップテーブルのヘッドピースによる矯正
トムソンテクニックで使用するドロップテーブルのヘッドピース(頭部用の落下枠)を用い、上部頚椎を矯正します。- 患者はうつ伏せになり、頭部をわずかに回旋・側屈させた状態にして適切なポジションを保持します。
- C1やC2の関節に対して素早いスラストを加え、ヘッドピースが落下することで頚椎への衝撃を吸収しつつ矯正を行います。
- 必要に応じて後頭骨に対してもドロップ矯正を行い、環軸関節(C1とC2、後頭骨の接合部)の機能を正常化させます。
矯正後の確認
矯正後、再度脚長差を測定し、脚の長さが揃っていることを確認します。これにより、頚椎のズレが解消され、神経系のバランスが正常化したことがわかります。
頚椎矯正の効果と改善
頚椎症候群の矯正により、患者さんは次のような改善を感じることがよくあります。
- 頚部痛や頭痛の改善
- めまいや耳鳴りの改善
- 肩こりや背部痛の改善
また、上部頚椎の矯正が全身の姿勢に与える影響が大きいため、腰痛や股関節痛が楽になることもあります。これは、首の骨(特にC1、C2)が脊柱全体の姿勢制御に深く関わっているためです。
検査からアジャストメントまでの流れ
トムソンテクニックの施術は、以下の流れで進行します。
1. 問診と検査
患者の症状を詳しく確認し、ディアフィールド脚長検査や可動域検査を行います。必要に応じて、レントゲンや姿勢分析装置を使用します。
2. 矯正計画の立案
検査結果を基に、どの部位を矯正するかを決定し、治療計画を立てます。
3. アジャストメント(矯正操作)
ドロップテーブルを使用して、最小限の力で全身を調整します。頚椎や骨盤部位の矯正から開始し、他の部位も調整します。
4. 再確認と効果の確認
施術後に再度脚長差を測定し、矯正が効果的であったかを確認します。また、可動域の改善をチェックします。