ポジショナルリリース
目次
ポジショナルリリース(PRT)
創始者と歴史
ポジショナルリリース(Positional Release Therapy, PRT)は、アメリカのオステオパシー医師であるローレンス・ジョーンズ D.O.(Lawrence Jones, D.O.)によって開発されたテクニックです。
ジョーンズは1950年代に、筋肉の緊張や痛みを持つ患者の治療中に、特定の姿勢を取らせることで痛みが軽減することを発見しました。
この発見を基に、ポジショナルリリースの理論と技術が体系化され、1970年代には正式な治療法として確立されました。
ポジショナルリリースの概論
ポジショナルリリースは、筋肉や関節の機能障害を痛みの最小限の位置に誘導することで改善するテクニックです。
一般的に、圧痛点(Tender Point)を指標にして、最も痛みの少ない姿勢(ポジション)を取り、その状態を90秒程度保持することで、筋緊張や関節の可動域の制限を緩和します。
この手法は、筋肉の過剰な緊張やスパズム(筋痙攣)を抑制し、神経筋のバランスを回復させることで、筋骨格系の正常な機能を取り戻すことを目的としています。
検査と治療の手順
ポジショナルリリースの治療プロセスは、以下の手順で進められます。
- 圧痛点の特定
- 患者の訴える痛みや可動域の制限を確認し、触診によって圧痛点を特定。
- 最適なポジションの決定
- 痛みが最小限になる姿勢を患者に取らせる。
- これは筋肉の緊張が緩む方向を探るプロセスであり、治療者の経験と触診技術が求められる。
- 姿勢の保持
- 約90秒間、このポジションを維持。
- この間に筋肉の緊張が自然と解放される。
- ゆっくりと元の姿勢に戻す
- 急激に戻すと筋緊張が再発する可能性があるため、慎重に行う。
- 再評価
- 圧痛点の消失、可動域の改善、痛みの変化を確認。
ポジショナルリリースの特徴
ポジショナルリリースの主な特徴は以下の通りです。
- 非侵襲的で痛みが少ない
- 患者にとって負担が少なく、特に痛みの強い患者に適用しやすい。
- 即効性がある
- 施術直後から可動域の改善や痛みの軽減が見られることが多い。
- 神経筋の自己調整を利用
- 受動的に筋肉を緩めるため、反射的な筋緊張を引き起こしにくい。
- 幅広い適応範囲
- 筋骨格系の問題だけでなく、自律神経の調整にも応用可能。
ポジショナルリリースの効果
ポジショナルリリースは、以下のような効果が期待されます。
- 筋緊張の解放
- 慢性的な筋肉のこわばりや緊張を緩和。
- 関節可動域の改善
- 関節の動きを制限する筋肉の緊張を緩めることで、可動域が拡大。
- 痛みの軽減
- 圧痛点を解放することで、疼痛の軽減が可能。
- 自律神経の調整
- 副交感神経を優位にし、リラックス効果をもたらす。
適応症
ポジショナルリリースは、以下のような症状に適応されます。
- 筋筋膜性疼痛症候群(MPS)
- 肩こり・首の痛み
- 腰痛(慢性・急性)
- 四十肩・五十肩
- 頭痛(緊張型頭痛)
- スポーツ障害(捻挫、筋肉の過緊張)
- 自律神経失調症による不調(疲労、倦怠感、ストレス)
まとめ
ポジショナルリリースは、患者の負担を最小限にしながら、筋緊張や関節の可動域を改善する優れた手技療法です。特に痛みの少ない治療を求める患者や、慢性的な筋肉のこわばりを抱える人に適しています。
オステオパシーのテクニックとして、他の徒手療法と組み合わせることで、より効果的な治療が可能になります。